岸本葉子さんが体験された虫垂がんは、日本では大腸がんのうち約0.2%ととても稀な病気です。そのため、症例や体験談が少なく、情報不足を感じている患者さんやご家族の方は多いようです。この「岸本葉子公認サイト」へも、虫垂がんの情報を求めて来られる方が少なくありません。
そこで、岸本さんの場合の経緯、症状、治療などをQ&Aの形でいくつかここにご紹介することにしました。
※ 以下のQ&Aは、「がんから始まる」岸本葉子著/文春文庫を参考に、管理人が質問と回答を作成し、岸本さんにご確認いただいたものです。詳細は本書をご参照ください。
※ がんは大変個人差の大きな病気です。あくまでも、「岸本葉子さんの場合」という一例としてご参考にしてください。
「がんから始まる」(文春文庫)より
Q.1 | がんと診断されたのはいつですか? |
A.1 | 40歳のとき、2001年10月のことです。 |
Q.2 | そのときの、がんの状態は? |
A.2 | 進行した虫垂がんで、開腹手術の結果、ステージVa、デュークス分類でいうとB。組織のタイプは粘液がんと診断されました。開腹前は、S状結腸がんとの診断でした。虫垂がS状結腸と癒着し、一塊をなしていたためです。このことは開腹して、わかりました。がんが虫垂にできたことが引き金となって虫垂炎が起き、がんと虫垂炎との両方が原因でS状結腸と虫垂が癒着したのだろうというのが、開腹後の執刀医の見解です。 |
Q.3 | がんとわかる前から、気になる自覚症状はあったのでしょうか? |
A.3 | 嘔吐や便通異常といった、消化器的な症状はありませんでした。 ただ2000年7月、9月に原因不明の発熱と腹痛を起こしました。病院で検査を受けたところ、炎症反応の数値は高くでたものの、そのほかの血液検査の結果や、エコー(超音波)による検査、レントゲンでは異常が見当たらず、腸炎と診断されました。後に、便の潜血反応を受けましたがそのときも異常なしでした。 |
Q.4 | がんであるとわかったきっかけは? |
A.4 | 2001年になっても、たまに腹部に異物感を覚え、痛みと熱も伴うため、注腸造影(腸をいったん空にして、バリウムを入れてX線撮影をすること)をした結果、大腸のS状結腸部分に、差し渡し約2センチ、厚さ約1センチの腫瘍(がん)があることがわかりました。 |
Q.5 | どのような治療を受けましたか? |
A.5 | がんであると診断されてすぐ(約一週間後)、入院し、開腹手術を受けました。手術では、虫垂と浸潤(隣接する臓器に広がること)していたS状結腸の一部、周辺の腹膜、リンパ腺を切除しました。入院期間は約一ヶ月でした。 |
Q.6 | 手術後の治療方針は? |
A.6 | ひと月おきに血液検査を、三、四ヶ月に一回CT検査とレントゲン検査を行っていくことになりました。 |
Q.7 | 放射線や抗がん剤による治療は? |
A.7 | 受けていません。 |
Q.8 | 退院後、検査通院以外に何か取り組まれたことはありますか? |
A.8 | 中西医結合(西洋医学を否定せず長所と短所をふまえた上で東洋医学と組み合わせる形の医療)を行っているクリニックで、生薬の処方と食事療法を受けました。クリニックでは、2002年3月に入ってから、サイトカインの注射も受けました。サイトカインとは、免疫担当細胞やリンパ球が分泌する物質で、生体の腫瘍反応を活性化するものです。ビタミンの注射と交互に、週二回、ひと月に渡って打ちました。 |
Q.9 | がんになってからの日々の食事はどのようなものを? |
A.9 | 漢方のクリニックでの指導のもと、食事療法を行いました。 「治る力を増進させるものを積極的にとる」「病気の方に、力を与えてしまうものは避ける」「漢方のはたらきを減じてしまうものをとらないようにする」の三つを基本的な考え方としています。 具体的には、 ・化学調味料は使わない。 ・食品添加物の入ったものは取らない。 ・ご飯は白米ではなく、胚芽米に雑穀を混ぜたもの。 ・肉、卵、乳製品は原則としてとらない。 ・動物性たんぱく質は、魚から。 といった食生活です。 |
虫垂がんに関する情報収集について
Q.10 | 虫垂がんについて、参考になる本やホームページをご存知でしたら紹介いただけますか |
A.10 | 残念ながら、虫垂がんに詳しい本やサイトは、存じません。がん全般については、国立がんセンターのサイトを参考にしました。 >> 国立がんセンターがん対策情報センター:がん情報サービス |
Q.11 | 虫垂がんなどの稀ながんの場合、情報をどのように探したらいいですか |
A.11 | 主治医となった先生も、他の先生がたに聞いたり、症例報告を読んだりして、必死で情報を探します。ですので、いちばんの情報源は、主治医と考えて下さい。 |
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『がんから始まる』 岸本葉子著(単行本/晶文社 文庫/文春文庫) がんがわかった経緯、入院から手術・退院までの詳細はこの本に詳しく 書かれています。また、退院後に取り組み始めた漢方や食事療法、サポートグルー プでの活動についても触れられています。丹念に綴られた再発に対する不安や心の 揺れとの付き合い方も参考になります。 ![]() ![]() |
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『がんと心』 岸本葉子・内富庸介著/晶文社 精神医学(特に精神腫瘍学)が専門の内富庸介氏と岸本さんの共著で す。「がんと心」とタイトルにあるように、がんそのものではなく、落ち込みや不 安など精神面への対応について書かれた本です。がんとわかってショックを受ける のは家族も同じです。患者本人だけでなく家族の心についても語られているのでご 家族の方にもおすすめです。 ![]() |
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『岸本葉子の暮らしとごはん』岸本葉子著/昭文社 がんの後の岸本さんの食生活をお知りになりたい方はこちらをどうぞ。 使用している調味料、日々の献立、実際のレシピなどが、写真たっぷりで紹介され ています。 ![]() |
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『四十でがんになってから』 岸本葉子著/講談社 岸本さんが一番長く、そして多く書き続けてきたのが日常エッセイで す。がんは、なかなか完全な“さよなら”が難しい病気。本書では、再発への不安に 襲われたり、腸の通過障害に見舞われたりしながらも、病後初の海外出張にチャレ ンジしたり、サポートグループでの温泉旅行へ出かけたりする病気と共存しながら の日常生活が綴られています。 ![]() |
※ 著作のうち、がんに関連したテーマのものをご紹介しました。それ以外の作品についてはこちらの作品リストをご覧ください。
作品リスト
●ジャパン・ウェルネス(http://www.japanwellness.jp/)
岸本葉子さんが会員になっているサポートグループ。がん患者やその家族への精神・心理的サポートを行う目的のNPOです。
●がんサポートキャンペーン(http://www.nhk.or.jp/support/)
NHKによるホームページ。「体験談」や「よろず相談室」、「がん用語集」など役立つコンテンツのほか、岸本さんの連載エッセー「あしたもいい日」もあります。
●がんになっても(http://www.az-oncology.jp/index.html)
がん患者さんやご家族のためのコミュニティーサイト。わたしからのメッセージーがん体験者よりーとして岸本さんへのインタビューも掲載されています。
以上の内容についてのお問い合わせは下記までお願いします。
メール:info@kishimoto-fan.com
「岸本葉子公認サイト」管理人